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ワールドワーク ~戦争のオルタナティブとして「対立」に取り組む (1) ~

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2007-09-09
 

ワールドワーク

 はじめまして。松田裕樹と申します。

 関西を中心に「ファシリテーター」として活動しながら、アメリカ・オレゴン州のポートランドにある「プロセスワーク研究所」の「紛争緩和ファシリテーションと組織変革」修士課程に在学中です。

 「ファシリテーション」とは、「グループでの話し合いや学習活動などが、より深まるように促す」手法で、ファシリテーターはそれを実践する人です。

 ファシリテーションにも様々な進め方がありますが、僕が学んでいるのは「プロセスワーク」(または「プロセス指向心理学」)という心理学・心理療法に基づく、「ワールドワーク」または「グループプロセス」と呼ばれる実践です。

 ワールドワークは、紛争や対立を意味あるものとしてとらえ、「その場に存在する、どんな認めたくないような声や、無視や排除をされがちな声にも価値がある」という「深層民主主義」という考え方に基づいて進められます。例えば、冷静な議論が良しとされる場では、感情的な意見は排除されがちですが、ワールドワークは、感情の表出にも開かれています。

 対立する両者の、両方の声を尊重していくのがワールドワークの特徴です。それだけでなく、その場に影響しているのに、誰もその立場で話していない声(「ゴーストロール」)に気づいたら、それも尊重して、あえてその場に持ち込む…というのも手法の1つです。

 例えば、対立する両者がどちらも相手を非難し、自分を「被害者」だと思っている場合、「加害者」はゴーストロールになっています。自分に加害者の側面もあることは、なかなか認められることではありません。そこでファシリテーターがあえて「加害者」の立場から発言を試みる…という場合があります。対立は一時的に激化するかも知れませんが、対立点がより明確になることが期待され、そうすることで膠着した状況に変化を促すのです。



 今あげたのは、あくまで進め方の一例に過ぎず、「その場で起こっていること(プロセス)に従っていく」という原則に沿って、その場その場にあわせた柔軟な展開をしていくのも特徴です。

 ワールドワークは、対立を人と人を結びつける契機に変え、戦争を未然に防ぐ「戦争のオルタナティブ」として機能させたいという願いとともに実践されており、紛争地帯などで、実際に対立する者同士を集めて取り組まれることもあります。

  今年の5月に、イスラエルとパレスチナの参加者が集まって、エルサレムで行なわれたワールドワークに参加する機会に恵まれたので、次回詳しく書く予定です。実際のワークの進め方についても、そこで詳しく触れていきたいと思います。

 また、2年に1度、世界中から数百人が集まる大規模なワールドワークが1週間程度行なわれ、様々な問題が語り合われます。昨年オーストラリア・シドニーで行なわれたワールドワークに参加しましたので、連載の3回目で触れる予定です。次回は、来年の4月下旬にロンドンで開催が予定されています。

ファシリテーター

 僕が「ファシリテーター」に興味を持つようになって、10年以上が経ちます。
 この言葉に出会った当初、某自治体職員として市民向け講座の企画・運営の仕事を始めたばかりだった僕にとって、ファシリテーターといえば「ワークショップ(参加・体験型学習)」という言葉とワンセットでした。ワークショップは、「そこに参加する人たち一人一人の意見・アイデアが活かされるような、オルタナティブな学習の進め方」として、とても魅力的なものに映りました。

 より面白く、より効果的なワークショップを求めていろいろと顔を出しているうちに、フィリピン教育演劇協会(PETA)と出会いました。
 演劇を手段として活用しながら、自分たちのおかれている状況をどうすれば変えられるか試行錯誤する中で、一人一人の力を引き出す。効果的だけど楽しい!…そんな手法にすっかり魅了されました。

 PETAが影響を受けたという、ブラジル生まれで世界中に広まっている手法、「被抑圧者の演劇」にも興味を持ち、2000年頃からファシリテーターをするようになりました。これについては、連載の4回目で詳しく触れる予定です。

 そして、これこそが究極のワークショップに違いない!と思っていた頃、2001年に出版された、プロセスワークの創始者アーノルド・ミンデルがワールドワークについて書いた「紛争の心理学」(講談社現代新書)に大いに興味を惹かれました。2004年頃から、実際にワールドワークに参加する機会があり、本格的に学ぼうと思い立ち、現在に至っています。

 僕にとっては、「被抑圧者の演劇」と「プロセスワーク」は、どちらも甲乙つけがたい、世の中を変えていくためのパワーを持つ魅力的な手法です。そして今は、2つを融合した新しい実践を模索しているところです。

 そんな僕の経験や活動について、連載をさせていただくことになりました。ここまでお読みいただきありがとうございます。今後もお読みいただければ幸いです。


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