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カリフォルニア・ダイバーシティ Vol.3

~ あるコミュニティ・リーダーの追悼式 ~

leader from from
飯田恵子 東京都 飯田恵子 東京都
day
2007-09-22
 

[彼の功績を称えて、アーツ地区の一角に設けられたJoel Bloom 広場の看板]

 飲み友達だったJoel Bloomが亡くなった。

 享年59歳。

 Joelは、ロサンゼルス市の『影の市長』と言われるくらい陽気な名物オジサンで、アーツ地区(昔倉庫街だった所にアーティストが沢山集まって移り住んでいる地区)というヒップな場所で小さなタバコ屋を営みながらコミュニティの声を行政に届ける町内会の世話役みたいなことをしていた。

 ロサンゼルスでは、地域ごとにエスニックの特色がかなり強く、それぞれの地区の代表者が話し合ってバス路線を決めたり、商業モールの開発に関する話し合い等をしたりする調整会議のようなものが公式・非公式合わせて複数存在している。

 例えばロサンゼル市の主導によって組織された「ロサンゼルス歴史文化地近隣地区審議会」では、アーツ地区、小東京地区、中華街地区、ヒスパニック地区、ソラノ・キャニオン地区、ビクター・ハイツ地区という、隣あう6つの地区からそれぞれ住民投票で選出された代表者が集まって情報交換を行ったり、市への助成の働きかけをしたり、市の開発計画に関する住民の声を伝える活動などを行っている。Joelは、アーツ地区の住民から選ばれてこの審議会の代表を務めていたりした。

  この他にも彼は、近隣地区の商業主らで自主的に組織した安全見回り隊(ネイバーフッド・ウオッチ・ウオーキング)の隊長をしていたり、隣の小東京の協議会では、唯一白人で投票権を持つ役員を務めていたりしていた。

 そんなJoelの死は、翌日の地元紙ロサンゼルス・タイムズ紙にも大きく写真入りで掲載され、彼の存在がコミュニティでいかに大きかったかを語っていた。

 彼のお葬式は残念ながら故郷のシカゴで行われるということで、ロサンゼルスでは親しい人達の手によって、彼の経営していた店の前で追悼式(メモリアル・サービス)が行われた。

 アメリカの追悼式というのは、その故人の生前の性格や周囲の友人たちの雰囲気によって千差万別で、ほとんどお葬式と変わらない荘厳な黒一色のセレモニーから、普段着で行う集会のようなものまで多種多様である。
 私は、「まあJoelだから・・・」と思い、とりあえず無難にカジュアルな黒いシャツとジーパンを着て出かけてみた。

 が、行ってみたら、いるわ、いるわ、・・・・赤、青、黄色、ピンク・・・・。
 「Joelの追悼式用に」となぜか髪をピンクに染めた友人は、私の格好を見て、「あら、随分ジミにしたわねえ~。Joelは暗いのは、キライなのよねえ・・・」とつぶやいていた(さすがロサンゼルスのアーティスト軍団・・・)。

 路上では、楽しい音楽がガンガン流れ、ホットドックや飲み物等の屋台が出ていて、前方に用意された即席の舞台では、Joelの友人たちが、生前の彼との想い出について、好き勝手に語っている。
 偶然近くを通りかかったインド系の家族が横で「皆楽しそうだけど、今日は何のお祭りですか?」と不思議そうに聞いていた。
 
 もちろんこの追悼式には、アーツ地区の住民のみならず、隣の小東京地区からたくさんの日系人、そのほかの地区からヒスパニックや黒人等、老若男女、人種、エスニック、政治家や警察・行政関係者の人間から、ビジネス経営者、アーティストまで、多種多様な人々が集合し、まるでカリフォルニア・ダイバーシティをそのまま縮図にしたかのような、カラフルさだった。
 

***



 ここカリフォルニアでは、「ダイバーシティ(多様性)」の重要性がよく説かれるが、裏を返すと、現実にはそれほど人種やエスニック、さまざまな社会階級の人間が混ざり合う機会があまり無いから、ということも言える。少し値段が高い高級レストランに行けば、ほとんど白人の客しかいなかったり、ロサンゼルス暴動が起きたサウスゲート地区に行けば黒人が圧倒的に多かったりする。つまり、カリフォルニアは、人種が溶け合って暮らす「メルティングポット」なのではなく、それぞれが固まって暮らす「サラダボウル」なのである。

 そんな環境の中で意識せずに暮らしていると、アメリカに住んでいながら、似たような社会的境遇の日本人やアジア系アメリカ人とだけ交流をして、他のエスニックや階級・職業の人とはほとんど交わる機会がなかったりもする。

 そうした社会の中で、さまざまな壁をとっぱらって、コミュニティの問題や、ダウンタウンのホームレス問題、その他様々な問題に取り組んでいたJoelの業績は本当に大きい。

 共通の友人とバカ話をしながら、彼の生前の暖かい笑顔を思い浮かべつつ、「自分が死んだら一体どれほどの人間が集まってくれるのだろう・・・。自分はどれだけ周囲の社会に貢献しているんだろう。」と改めて思い返した1日だった。


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