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ナバホ国からのメッセージ 大地と共に生きる 第4話 

~ ピースメイキング ステップ 3. 情報の開示 ~

leader from from
有元三智子
day
2007-02-03
 

 今回はピースメイキングのステップ3、情報の開示について話していこうと思う。

 最初の記事にも触れたのだが、西洋的な裁判システムとナバホのピースメイキングシステムは、ベースとなっているものが異なる。西洋的な裁判システムでは、勝者と敗者を決定するのが目的で、問題そのものに焦点が当てられる。法律という強制力を用いて、人を裁くのが目的だ。

 ナバホ国前最高裁判官だった人が、以前こんなことを話していた。

 彼は何年もの間、人々が裁判で争う様子を見てきた。裁判が終わると、一方の人々は狂喜して踊るように裁判所を出て行くのに対し、もう一方の人々はがっかりと肩を落として裁判所を出て行く。裁判の後、争いを起こした両者に調和がもたらされることはない。それどころか、ほとんどのケースでは、両者の中に憎しみが残ったままになる。その憎しみは、裁判の後もずっとその一族の中に残り、両一族は互いに憎しみ合いながら、残りの人生を生きていくことになる。

 そんな様子を見ながら、彼はよくこんな風に感じていた。“人々の感情はどう処理してあげれば良いのだろう? この争いの方法では、癒しというプロセスは全く行われていない。話し合いによって、もっと良い解決策を見つけ出し、人々を癒すことができたはずなのに…”

 西洋的な裁判システムでは、ナバホにとっての「真実」は見えない。物事が起こるとき、必ず何らかの原因や背景的な感情が存在する。それは、加害者側にとっての「真実」であり、被害者側にとっての「真実」である。けれども、西洋的な裁判システムで重要視されるのは、勝ち負けという結果のみだ。勝った側の主張のみが真実になり、負けた側の真実は誰にも知られずに終わる。あるいは、勝った側の本当の真実が闇に埋もれたまま、公表されずに終わる場合もある。

 ここでは真の癒しというプロセスが行われていないため、本質的な解決にはならず、両者の中に憎しみや不満足が残る。この憎しみは水面下で倍増し、他の手段で仕返しをしようと考える人もいる。結果的に、同じような犯罪や事件が繰り返し起こる可能性が残ってしまう。

・・・


 一方、ナバホのピースメイキングシステムは、上記で述べた西洋的な裁判システムとは対照的なものだ。ここでは、問題そのものではなく、なぜ不調が起こったのかという原因に焦点が当てられる。

 このステップでは、当事者はそれぞれの主観から事件のいきさつを説明する。西洋的なシステムでは、弁護士や検事が主に発言するが、ここでは、当事者はそれぞれ、自分の思う真実を口に出す機会を持つ。

 ピースメイキングは水平型のシステムで、全員参加型のシステムだ。参加者はみんな同じレベルであるとみなされる。ここに参加している、加害者の家族や親戚、被害者の家族や親戚には全員、発言権があり、同時に発言する責任を担っている。単なる傍観者というのは1人も存在しない。すべてのものがつながっており、自分に無関係なものなど何も無いのだ。全員がその問題について真剣に取り組み、それを改善するための良いアイデアをひねり出す。

この話し合いで決定される内容は、大きく分けて2つある。
(1) 被害者に対してどのような補償を行うのか
(2) 加害者に対してどのような処置を施すのか

 話し合いは参加者全員が納得できる結論に至るまで行われる。これには多大な時間と忍耐を要する。しかし、一旦、解決策が見出されると、その加害者が同じ間違いを繰り返す率は非常に少なくなる。 (つづく)


ナバホ国からのメッセージ 大地と共に生きる 第7話
ナバホ国からのメッセージ 大地と共に生きる 第6話 
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ナバホ国からのメッセージ 大地と共に生きる 第3話 
ナバホ国からのメッセージ 大地と共に生きる 第2話 ~ ピースメイキング ステップ 1. 準備としての情報収集(ピースメイカーによる講義) ~
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