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ナバホ国からのメッセージ 大地と共に生きる 第7話

~ ピースメイキングで要求される度量 ~

leader from from
有元三智子
day
2007-08-24
 

 今回は「ピースメイキングで要求される度量」について話していこうと思う。

 第4話でお話したとおり、ピースメイキングには、当事者それぞれの主観から事件のいきさつを話していくプロセスがある。当事者を含む参加者にとって、これらは辛いプロセスだ。思い出したくないことや、早く忘れてしまいたい事実、それに知らなかった事実までを、もう一度目の前に突きつけられることになる。

 しかし、ここからのプロセスはさらに辛いものだ。事実を知り、嫌な事件を思い出した上で、それらを「許す」という作業をしなければならないからだ。

 これは他人事などでは決してない。以前の記事にも書いたのだが、ピースメイキングの参加者は単なる傍観者ではない。ピースメイキングは全員参加で成り立つ。だから、事件の一連を他人事として捉えるのではなく、自分に置き換えて考えるようになる。

 私達人間には、誰にでも醜さが潜んでいて、それは、弱さであったり、妬みであったり、甘えであったり、ケチ心であったりする。事件を自分のこととして捉えると、自分自身のこういう部分を発見するきっかけになることがある。

 「許す」という作業では、各人の度量が試される。人を許すには、時間もエネルギーも要するものだ。自分では「許した」つもりでいても、心のどこかではまだ憎しみや怒りが残っていることがよくある。本当に「許す」ためには、自分の中の醜さとも戦わなければならない。自分以外の誰も助けてくれない。各人で自分との戦いに勝たなければならないのだ。

 「許す」という作業は、能動的な作業だ。自分から進んで「許す」のだと心に誓い、率先してそれを行う必要がある。「時間が経てば忘れられるだろう」などと考えてはいけない。確かに人間には忘却本能がある。しかし、これでは本当の解決にはならないし、真の成長とはいえない。

 「許す」方法は人それぞれ異なると思うが、朝晩の祈りの中にそのことを含める人もいる。その祈りは自分自身に対する宣言になる。

 「××が私に放った言動、行動によって、私はとても傷つきました。しかし、私はそこから学びを得ることができました。今回の一件によって、私は学びを得て、成長することができたことを認めます。今この瞬間から、××のことを許すことをここに宣言します。そして、今回の貴重な学びの機会を与えてくれた××に対して、ポジティブな光を送ります。また、××自身もここから学び、成長することを祈ります」

 ××の部分は、自分を傷つけた他人であることもあるし、自分自身であることもある。

 「許す」ことは、「手放す」ということだ。だから、完全に自分の中から出し切ってしまうまでは、この祈りを繰り返し行う。

 自分自身で完全に手放せたと感じられたときが、次のステップに進むためのゴーサインになる。それ以降は、その事件のことを一切思い出したり、口に出したりしてはいけない。

・・・


 この記事を書いている頃に、友人と「許し」について話し合った。彼女は彼女の夫がつく嘘について話していた。その話を聞いていて、「彼はどうしてそんな嘘をつくのだろう?」と不思議に思った。私自身も、ある白人男性に対して怒りを持っていた。友人と同じく、彼のついた嘘が許せなかった。「彼はどうしてそんな嘘をついたのだろう?」と、何日も考えた。「許そう」と努力するのだが、最終的にはこの疑問に行き着いてしまう。

 友人とのこの会話がきっかけとなり、ピースメイキングで学んだことを改めて考えてみた。「許す」ということは「手放すこと」。だから、「どうして?」という疑問も、一緒に手放してしまわなければならないのだと、改めて思った。

 そういえば、ナバホ父から何度も言われている言葉がある。「学んだことを、実生活の中で実践してこそ、その学びは自分のものとして習得できるのだ」と。今まさに私は、この「許し」のプロセスを実践し、学んでいる最中なのである。(つづく)


ナバホ国からのメッセージ 大地と共に生きる 第6話 
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