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NPO法人学生耕作隊の軌跡、そしてこれから~学生ベンチャーを農業で~(1)

学生による農作業支援ベンチャー

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近藤紀子
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2005-03-25
 

第一章 学生による農作業支援ベンチャー「学生耕作隊」起業まで

 2002年9月2日、山口県で77番目に認証されたNPO法人すなわち「学生耕作隊」が誕生した。学生耕作隊は、農業・農村の活性化に貢献することを最大の目的とし、山口県下各地で農作業支援や農地保全の活動を展開している。

 学生耕作隊が生まれたとき、私は山口大学農学部の3年生だった。

 大学に入って、世界の食料事情について学んだ。かつて科学技術や工業の発展により拡大し続けてきた耕地面積が近年ほぼ横ばいになっていること、農薬や化学肥料により伸び続けてきた作物の単収(単位あたり収量)の増加が今後はあまり期待できないこと、過度の放牧・森林の過伐・塩類集積により農地の砂漠化が進行していること、そして人口爆発・・・。世界の食料を取り巻く環境は、とても楽観視できるものではなかった。

 そして楽観視できないのは、日本の食料事情も同じであった。日本では戦後の高度経済成長に伴い「食の欧米化」が進んだが、日本農業はそのような食生活の変化にうまく対応することができず、食料を輸入に頼るようになった。

 その結果、食料自給率が低下し、1998年度以降は6年連続で40%注1と低い水準が続いている。主な先進国の食料自給率(2002年)注2を比較してみると、オーストラリア230%、アメリカ119%、フランス130%、イギリス74%となっており、日本の食料自給率が主要先進国の中で最低水準となっていることがわかる。

 私はそのような事実を知り、現在の日本の農業に対して「このままではいけない」と考えるようになった。当時、私は大学3年生。そろそろ大学卒業後の進路を考える時期である。そして、そのような危機感から、就職するなら日本の農業を守る仕事に、農業・農村の活性化に携われる仕事に就きたいと思うようになった。

 しかし、そのような就職先は、当時の私が探した限りでは見つからず、自分の進むべき進路が見えずに悶々としていた時、起業支援で著名な片岡勝氏(現学生耕作隊副理事長)が講師として招聘されている「ベンチャービジネス論」と出会ったのである。

 ベンチャービジネス論では座学だけでなく、受講生が地域で問題となっている事柄を発見し、それを解決するためにプランを立て、大学の外に出て実践する、という実学の面も重視されていた。私は片岡氏や受講生とのディスカッションを通じて、若者と農村の関係性について考えるようになった。

 過疎化や高齢化のため、農村で若い力が必要とされていることは誰もが感じていることだった。一方で、「若い人が農業なんてやるわけがない」と言う言葉をよく耳にした。では、実際のところ、若者は農業についてどう感じているのか。それを明らかにするため、2001年秋、「大学生の農業に対する意識調査アンケート」を山口大学の全学部一年生を対象に行った。

 約1400人(全一年生の約7割)からアンケートを回収し、そのうち67%、すなわち3人に2人の学生から「生産現場に出て生産活動をやってみたい」という回答が得られ、若者が農業に関心を持っていることが明らかになった。

 農村では若者を必要としているにも係らず、また、農業に関心を持つ若者が多く存在するにも係らず、農村の現場に若者が少ないのはなぜか。それは、農村の現場に足を踏み入れる「きっかけ」がないからではないのかと、私は考えた。

 しかし、農村サイドからの若者を取り込むための取組は、若者にとって身近に感じられるものではなかった。それならば、若者サイドから農村に乗り込もうと、2001年冬、山口大学で学生耕作隊設立準備会を開催し、翌年1月15日に、山口大学の学生有志ら30人で、農業・農村の活性化に寄与することを目的として、農作業支援や農業体験の場づくり等を行う「学生耕作隊」を設立し、その後、組織をより強化するために、2002年9月にNPO法人化した。

  

[大島みかん]

 学生耕作隊は農業に興味のある人と、人手不足で困っている農家とのマッチングを行っている。農業版の人材派遣をイメージしてもらえればわかりやすいだろう。農業のお手伝いをしてくれる人は登録会員として、農業を手伝ってほしい人は農家会員として学生耕作隊に入会してもらう。人材派遣と違うところは、「雇用」関係ではなく、両者の合意による「有償活動」という「会員間の助け合い」の関係であることだ。(つづく)

注1:カロリーベースの食料自給率  注2:カロリーベースの総合食料自給率

近藤紀子/NPO法人学生耕作隊理事長


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