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2011-11-23 (水)

[書評]代替医療のトリック

カテゴリー:書評

この本のタイトルが、もっとニュートラルなものであれば、より多くの人が手に取っただろうに、と思うと大変残念な印象を受ける。この本のタイトルから予想される内容とは異なり、これは「代替医療のトリックを明らかにしている本」では、まったくない。
  
この本が示しているのは、「本当に効いたかどうか」を判断するために必要なデータとは何か、ということである。
  
代替医療の信奉者はしばしば、「科学者はどうして効くのか理由のわからないものには目をつぶり、見なかったことにする」、という批判をするが、この本を読むとその批判がまったく的外れであることが分かる。
  
「理由が分からなくても本当に効くのなら良い。しかし、それは本当に効いているのか。」
  
この本が明らかにしているのは、そのことである。第一章は、代替医療ではなく、通常の医療の話なのだが、現在の通常医療は、言うまでもなく登場した当時は代替医療だった。それが、現在の主流医療として認められるに至ったのは、「本当に効く」ことを、誰もが納得するデータによって示してきたからだ。
  
ここに登場するナイチンゲールもその一人である。ナイチンゲールは、野戦病院で献身的に働いた看護師として広く知られているが、実は数学が得意で、病院の衛生状態の重要さや、訓練された看護師の必要性を統計によって示し、当時の医学界を説得して病院の衛生状態を高め、看護師学校を設立したことで後世に名を残したのだ。
  
当時の医療界では、訓練された看護師の必要性は認められておらず、むしろ「訓練した看護師が世話をした患者の死亡率は、訓練を受けない看護師より高い」と言われていた。これは、重病患者の多い病院に訓練された看護師が派遣されることが多かったために起きた現象なのだが、科学的にデータを分析する習慣のなかった当時の人々は、自分の目で見たままに、「看護師を訓練するのは無駄である」と思っていたのだ。
  
同じように、病院の劣悪な衛生環境の改善が患者の生存率の向上に効果があることも、当時の医学ではまったく認められておらず、この本でも何度か指摘されるように、当時の病院は、むしろ行かないほうが安全であるような場所だった。
  
興味深いのは、現在広く浸透している代替医療のいくつかは、この当時の劣悪な衛生状態の病院への批判に起源を持つものだということだ。その意味では、当時の主流医学を批判した代替医療は、まったく的外れというわけではなかったのだ。しかし、現実に当時の医療界を改革したのは、科学的な統計に基づく医療だった。代替医療に関心を持つ人は、ぜひ医学の歴史を記した第一章だけでも、読んでみて欲しいと思う。
  
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2011-03-26 (土)

原爆美術展の中止とアエラへの批判について

カテゴリー:メンバー日記(世界の日常)

 水曜の午後、図書館で調べごとをして外に出ると小雨だった。傘を忘れたことに気づいてゲンナリしたが、仕方なく襟を立て、駅まで早く歩いた。呼吸を大きくしないように、息をつめて。
    
 その時、大げさかもしれないが、広島の雨を思い出した。広島の雨に打たれた人々を、こんなに親身に感じたのは初めてのことだ。
  
 目黒区立美術館は、予定していた原爆美術展を中止したそうだ。理由は「イメージ的に原爆と原発事故が重なる部分がある。この時期に鑑賞してもらう内容ではない」とのことだ。
  
 この判断はおかしいのではないか。原爆美術展は、今こそやるべきだったのではないか。今ほど、関東の人々が原爆を身近に感じることのできる時期は二度とない筈だ(本当に二度とないかどうかは、私たちの今後の選択次第なので、現時点では希望的観測です)。
  
 私は、この中止を聞いてアエラへの批判を思い出した。アエラは、「放射能が来る」という表紙が不安を感じさせるとして批判されたが、現に放射能は来ているのだから、アエラは事態の推移を正確に予想しそれへの対応策を分り易く書いていたことになる。
  
 読めば分るのだが、記事は必ずしも不安を煽るものではなく、セシウムは思いので遠くまで飛散しないこと、ヨウ素の半減期は8日間であることなどの情報も書いてあり、バランスの取れた良い記事だった。
  
 つまり、アエラを批判していた人たちは、恐らくアエラを読んでいないのだ。元々朝日の嫌いな人々が炊きつけ、多くの人は、いつものバッシングムードに乗っていただけだろう。
  
 そして、もし美術展を中止した人々が、アエラのことを考えていたとしたら、このバッシングに参加していた人々は、原爆展を中止させることにも成功したことになる。私はアエラとは何の関係もないのだが、読まずに批判するような、自分で考えない人々のバッシングによって、言論の自主規制が広がることに危惧を感じるのだ。

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投稿者:三沢健直  Comments: 0 Trackbacks: 0

2010-11-22 (月)

暴力装置とメディア

カテゴリー:メンバー日記(世界の日常)

「自衛隊は暴力装置である」という官房長官の発言を問題発言と報道するメディアを見て、少し「恐怖」を感じた。
  
戦前の新聞のようだ、という言い方は、これまで何度も聞いたことはあったのだが、個人的には、それを初めて感じた。
  
「自衛隊や警察や監獄が暴力装置である」という言い方は、政治思想や社会学的な本を読んでいる人にとっては、ごく聞きなれた言い回しだし、常識の類に属することだ。
 学問的に正しいことを言って、政治的に批判されるというのは、戦前の天皇機関説を想起してしまう。
  
個々人が社会契約に基づいて暴力を放棄し、国家がそれを独占すると考えるのが近代思想ではないのか?
  
確かに日常生活の中で、暴力という言葉は、違法な力の行使として使われることは多いので、本を読まない若者が驚くなら分るが、大人が過敏に反応してしまうのでは、自らの深刻な教養不足をひけらかしているようなものだ。
  
一部の自民党議員には、本当に教養がないように見えるが、多数は承知の上で、単に戦略的に批判していると思う。民主党も野党だったときは似たようなことをしていた。
問題なのは、やはりメディアだ。いつまで子供じみた批判のための批判を続ければ気が済むのだろうか?

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投稿者:三沢健直  Comments: 0 Trackbacks: 0

2010-04-13 (火)

官僚とメディア(魚住昭 著)

カテゴリー:書評

検察の暴走とメディアの追従(あるいはその逆)について、著者は既に2007年に指摘していた。村木元局長の事件までは半信半疑だったのだが、どうやら検察の暴走やメディアとの癒着は本当のことらしい。
  
姉歯事件の報道についても、ヒューザーの小島社長、木村建設、総合経営研究所の所長、とメディアでは「悪い奴」らがたくさん登場したが、何と驚いたことに彼らは本当に被害者で、実質的に姉歯の単独犯罪だった。
しかも、元はと言えば、後で取り替えるつもりでダミーで出した構造計算が国交省の審査を通ってしまい、差し替えができなくなったことが、最初の犯罪だった。
  
この件で最も責任が重いのは、建築確認システムを形骸化させた国交省なのだ。
  
しかも驚愕するのは、国交省は自らの責任を回避するために、検察と共に上記の人々を生贄とした。メディアは完全に官僚に操られていたか、あるいは本当の責任に最初から関心がなく、誰かを責めることで視聴率が上がれば良かっただけなのだ。
  
これらの人々は、構造計算の問題とは別件で逮捕され、別件で処罰された。それは違法行為の処罰ではなく、完全な見せしめだ。しかも罰せられた行為は営利企業では珍しくないことばかりだったのだ。裁判でも、彼らの違法行為は「建築確認の違法とは関係がない」という判決が出ている。
  
他にも様々な事例が出てくるので、メディアと官僚の癒着、検察の暴走などに関心のある人は読んだほう良いと思う。
  

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投稿者:三沢健直  Comments: 0 Trackbacks: 0

2008-12-13 (土)

テレビの嘘を見破る (2004 新潮社 今野勉著)

カテゴリー:書評

海外では、「ドキュメンタリー」の定義が、「現実の写実、あるいはまじめな再現」であるため、海外のドキュメンタリーには、現在の日本では「やらせ」と認定されるような演出が日常的に含まれる。
  
例えば、ある村落の文化・生活を表現するための優秀なドキュメンタリー作品において、描かれた家族は、実は本当の家族ではなく、村落から集められた人々であるようなケース。日本では最近の「やらせ批判」によって、海外のように堂々とは行わなくなったが、程度の差はあれ、今でも日常的に行われている。
  
本を読むと、捏造と演出あるいは効率化の境界線のケースが多く、再現をすべてなくしたら、表現としてもビジネスとしてもテレビは成立しないことが分かる。一方「これは再現である」という但し書きを、すべてに入れるのが難しいことも分かる。むしろ見る側が、テレビというものは、情報を「物語化」して伝えるメディアだということを前提にする習慣をつけるほうが良いのだろう。
  
物語化というのは、「事実とされる話」を再現することによって「事実」とするということ。「テレビは嘘をつく」というよりも、「テレビは事実を構成する」という方が良いと思う。
  
といって新聞が事実を伝えるかというと、必ずしもそうでもない。
  

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投稿者:三沢健直  Comments: 0 Trackbacks: 0

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